それが人事の仕事である。
最近聞いた言葉で、とてもしっくりきた言葉です。
今日は、そんな矛盾の一つの表れでもある「人の相談」について書いてみます。
私たちは矛盾の生き物です。
頭でわかっていることと、心でわかっていることが必ずしも一致するわけではありません。
たとえば、
頭では栄養バランスが良いものを食べないと、と思っても心ではラーメンが食べたくて、やっぱりラーメン食べたり。
頭ではもう寝ないと明日が辛い、とわかっていても録り溜めていたドラマを見ることがやめられなくて夜更かししたり。
頭ではこんなこと言っちゃだめ、とわかっていても感情が爆発してつい口にしちゃったり。
どれもいま思い出してみた私の経験ですが、あなたにもいろいろ「矛盾」ありますよね?
キャリアコンサルティングでお話しをお聴きしていても、様々にでてきます。
転職活動を進めないといけないのに、なんだか動く気になれなかったり。
こんな仕事 or 会社もうどうなったっていいんだ!と言ってみても、本当はここにいたくて、やっぱり褒めてほしかったり。
「わたし、成長なんて望んでませんから」と言いながら、でも本当はやってみたいことがあるんだけど失敗するのが怖かったり。
クライエントの方が発する言葉には、いろんな背景がわんさか含まれています。
矛盾していると、自分で気づければいいんですが(あるいは気づいているんですが)、認めることはなかなか難しいもの。
気付いてしまったら、なんとかしないといけない、と思うから。
今も頑張っているのに、忙しいのに、気づいたらそこにも手をつけないといけないの?とふと頭をよぎったりするかもしれません。
よく、そんな時はまず「そう思ってるんだなぁ、と受け止める練習」をすることをお勧めしていますが、これもなかなか難しいですよね。
私たちは「解決することが良いこと」として訓練してきていると思いませんか?
小学校のテストでは問題が出されて、〇×で分かれる答えを書いて解決し、
親からは「こうしなさい」と正解を突き付けられて解決し、
社会人になったら「課題を見つけて解決する人」が求められるから解決するよう頑張って、
毎日毎日「なんとか解決しよう」と生きています。
だから矛盾なんて見つけると、
「ほら、だからこうすればいいよ!」
「だから言ったじゃない、あんなことするから」
「決まってるじゃない、こっちの方がいいよ。」
「好きにすれば(投げやり)」
と解決したくなります。
スッキリしますからね。
でも、悩んでいる人は大体そんなことはわかっていたりします。
それでもしないのは、そこに理論と感情の矛盾があるから、というのも一つの理由だと思います。
よく私が「相談できる場所がないと感じていた」というのは、ここです。
信頼できる先輩や、同僚や、家族がいても「聴いてくれる」とは別でした。
聴くは技術だからです。
「わたし」が話したいのに、上に書いたような言葉、すぐ相手に言ってませんか?
「相談したいんですけど」は、まず「聴いてみないとわからない」はずです。
突然あなたの経験則なんて聞いても、戸惑うわけです。(アドバイスとして求められた場合はもちろん別です)
だって「わたし」の矛盾なんだから、わたしは「あなた」ではない。あなたに何がわかるの状態になってしまいます。
相手がそうなってしまうと、「相談された側」の自己満足で終わってしまいがちで、「相談したかった側」は、もう話すまい・・・と決めてしまうかもしれません。
それが上司と部下だったら?
上司は、部下をマネジメントしていくのに大いに困りますよね。
部下は、結局話せずモチベーションも下がるし、その悩みやモヤモヤに固執して仕事に支障が出るかもしれません。
聴かせてもらわないと何もわからないので、私たちは丁寧に聴かせていただくのです。
人事や人材育成というのは本当に「正解がない」仕事だといえます。
私はいつのまにかここに魅力を感じて、邁進してきていることにも、不思議を感じます。
10年前の自分ならきっと「矛盾していること」に対して自分で抱えられず、この人間の面倒臭さにはできるだけ関わりたくなかったからです。
頭でわかってるならさっさとやろうよ。自分にも他人にもこのスタンスでした。
上に書いたような、いらないアドバイスを真っ先にしていました。
そして、仕事はどんどん進むのに、いつしか自分がついていけなくなった経験があります。
燃え尽きてしまいました。
矛盾を見つめる時間を持たず、その源になっている自分の心の声を聴かず、認めなかったからです。
矛盾は当然。頭でわかっても心が整わないと人間は動きだせません。
まずは、相談したいと来てくれた人の話を、最後まで、ちゃんと聴いてみませんか?
内容が矛盾していても、整えていくのはその人自身がちゃんとできます。
そうしていくと、「人間としての成長」が少しずつ進み、その人自身にも、組織にとってもプラスになっていきます。
一見簡単そうで、時間がかかること。